ラッフルズ 1887
Raffles Dohaは、カタールの首都に新設されるにあたり、ロンドンを拠点とするキュレーター集団、ArtLinkに体験型ライブラリーバーの設計を依頼しました。ラッフルズ 1887は、ArtLinkの創設者であるタル・ダナイ氏に、書物に秘められた生涯と、彼の「文化の商人」という哲学が素晴らしい文学作品のコレクションにどのような影響を与えたのかについて、話を伺いました。
ヨーロッパとアジアを結ぶ古くからの陸路と海路の要衝に位置するカタールは、さまざまな文化の影響を受けてきました。他の閉鎖的な国とは異なり、カタールの人々はこうした影響を受け入れ、商人のキャラバンを歓迎して、独自の文化的伝統と物語を豊かなものにしてきたのです。Raffles Dohaがこの新しいホテルのライブラリー設計を一から任せた際、ArtLinkのキュレーター陣はこの特色に着目し、「文化の商人」と名付けました。そしてこれが、素晴らしい文化的冒険のインスピレーション源となったのです。
洗練された芸術言語を駆使し、まっさらな壁を個性あふれる空間に変えようとしている多くの新築ホテルにとって、ArtLinkは頼みの綱となる情報源です。新たなホスピタリティ事業に情緒的・文化的つながりを浸透させるのに、アートコレクションほど効果的なものはありません。ArtLinkのクライアントの顔ぶれがそれを物語っています。現に、Raffles Dohaのオーナーは2022年のオープン時に、三日月刀型のタワーという大胆な建築表現に見合った壮大なアートと彫刻のキュレーションをArtLinkに依頼していました。ですが、彼らの熱意はそれだけにとどまらなかったのです。
ArtLinkの創設者タル・ダナイ氏は、ラッフルズのライターズ バーが入ることになる「世界の古典の図書館」の設計を依頼されました。同氏は当時を振り返り、こう語っています。「私たちの狙いは、単に都市の図書館を作るのではなく、ラッフルズブランドとカタールの文化をつなぐステートメントを生み出すことでした。ライターズ バーは、ラッフルズの特色の一つです。そこは、作家が次の傑作を書くためのインスピレーションを発見し、読書家は素晴らしい文学作品に囲まれて安らぐことのできる、サンクチュアリなのです。私たちが『文化の商人』であるなら、ここにラッフルズの感情に訴える言語を加えれば、ドーハのラッフルズ ライターズ バーのDNAが生まれます」
「文化のやり取り」とは、単に棚にものを並べることではありません。「求めていたのは『やり取りすること』です。命が宿っているものが必要でした。3日間で7,000冊の新しい本を用意することもできたでしょうが、それではただの飾りになってしまいます。私たちが必要としていたのは生きているものでした。そこで生活の跡や指紋、コーヒーの染み、余白に書き込みのある古本を購入することにこだわったのです。ゲストがそれを読み、ワインをこぼしたら、その本は中に書かれた言葉と同じくらい、それ自体の生涯を語ってくれるでしょう」
さらに興味深いのが、ブルーシガー ライターズ ラウンジは、その名が示すとおり、シガーバーとしても利用されるよう運命づけられていたということです。「たばこの煙が本によくないということは考えませんでした。むしろ風合いが加わり、感覚的な体験全体を高めるだろうと思ったのです」とダナイ氏は言います。また、ある本棚の後ろには、まるで優れたミステリー作品に登場するような「秘密のライブラリー」が隠れています。棚を横に移動させると現れる小部屋には、135冊の初版本を含む1,000冊以上のスパイ・探偵小説などの本が壁一面に並び、ヒュミドールと4人掛けの座席も用意されています。謎めいた雰囲気に包まれ、一人で本を読んだり、ひそやかな会合を開いたりするのにうってつけの静かな空間です。
ブルーシガーのライブラリーはそれ自体が素晴らしい作品ですが、その誕生により、つながり合う体験を提供するユニークな空間がホテルに生まれました。体験という動脈が流れる心臓と言ってもよいでしょう。『白鯨』にインスピレーションを得たカクテルや、ヘミングウェイお気に入りのダイキリとキューバ風の料理が提供される「ヘミングウェイ アワー」、女優が『千夜一夜物語』の一章を朗読するひととき、料理の盛り合わせに本を添えたルームサービスなど、創造的な可能性はほぼ無限です。もちろんゲストはこのライブラリーを図書室として利用し、本を借りだして滞在中に読み終えることもできます。
カタラタワーの建物は、文化の象徴となることを目指して設計されました。その意図を強化するのがこのライブラリーです。英語だけでなく、アラビア語、フランス語、オランダ語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語の本も収められたこの有意義なコレクションは、文化交流とストーリーテリングの共有というインスピレーションに満ちた環境を育むものです。現代を生きる人々が共通の利益のために文化をやり取りするには、最適な手段だといえるでしょう。