ラッフルズ 1887
元米大統領夫人、ジャクリーン・ケネディはアンコールワットを一目見たいと常に夢見ていました。1967年にカンボジアを訪問するチャンスが訪れたとき、彼女はそれを「少女時代の夢が叶った」と表現しました。雑誌『ライフ』は彼女の一週間の旅を表紙に掲載し、ケネディ夫人の「輝き」は「今やプノンペンでもパリと同じくらい有名である」と伝えました。『ライフ』によると、彼女はシハヌーク殿下自身のジャズ作曲を鑑賞する時間も作ったそうです。
しかし、その訪問はほぼ実現しませんでした。1965年、カンボジアと米国の国交は断絶していたため、ケネディ夫人は入国に際して特別な許可が必要でした。シハヌーク殿下から正式に招待状が届きましたが、そこに辿り着くまでの道のりは見えないという、現実的な問題が立ちはだかりました。米国からバンコクへの便はありましたが、カンボジアへの乗り継ぎ便はなかったのです。そこで問題を解決するために、彼女と側近たちは、米空軍のC54輸送機でプノンペンに飛んだのです。このC54は、2年ぶりにカンボジアに降り立った米国の航空機でした。1967年11月2日、20世紀で最もスタイリッシュな女性の1人が飛行機から降り立つと、熱狂的な歓迎を受けました。カンボジアの国民は、他の国々と同様、彼女を愛していました。
当然のことながら、ケネディ夫人はプノンペンで最も格式の高いホテル、Hotel Le Royal(現在のRaffles Hotel Le Royal)に滞在しました。彼女の滞在を記念するお酒には、シャンパンカクテルが最高ではないでしょうか? 結局、彼女のシャンパンとカクテルに対する情熱は広く知られることとなりました。実際、彼女は伝統的な食前酒であるパンチを、ヨーロッパスタイルのカクテルに置き換えたことで、ホワイトハウスでちょっとした騒ぎを起こしたと言われています。
エレガントなバラ色のカクテルは、クレーム ド フレーズ デ ボワを適量とコニャックを少量加え、冷やしたシャンパンで満たされています。しかし、それを何と呼んだらよいでしょうか? 魅力的な美しい女性を意味するフランス語は、響きも完璧でした(ケネディ夫人の数々の浮名を考えると、少々きわどい表現ではありますが)。それから50年以上経った今でも、ファム・ファタールはホテルで最も人気の高いカクテルのひとつです。
ケネディ夫人がファム・ファタールという言葉をどのように解釈したのかは、残念ながら歴史には記録されていません。しかし、1997年にホテルのエレファント バーを改装した際、スタッフは赤い口紅の跡がうっすらとついた洗っていないグラスを発見しました。もしかしたら、それは何年も前にジャクリーン・ケネディがファム・ファタールを口にしたグラスなのでしょうか? もちろん、それを否定する理由はまったくありません。今日、そのグラスはバーの一番目立つ場所に置かれており、特別な訪問を思い出させるものとなっています。
ファム・ファタールの作り方
❧ シャンパンフルートにクレーム ド フレーズ デ ボワを7ml注ぎます
❧ コニャックを少量加えます
❧ シャンパンまたはスパークリングワインで満たします
❧ バラの花びらを1枚添えます